「……知らないんだよね。畔塚さんなら、西さんの連絡先知ってると思ってた」

 「楽しく喋ってると毎回忘れちゃうんだよね。華香が休み始めてから、そういや連絡先持ってないなぁって思い始めて。そういう宗谷くんこそ持ってないの? 付き合ってるんでしょ?」

 「あぁ、まぁ、……てか、西さんからその話聞いたんだ?」

 「きいたっていうか、察した。華香何も言ってくれないんだもん」


 ちょっと寂しくもなるよねぇと畔塚さんは言う。やけにみんなが俺たちのことをそっとしておいてくれるなぁと思ってたら、西さんも人に伝えてなかったのか。直接西さんに俺たちの関係を黙っておいてほしいと言ったことはない。

 一番仲が良い人にすら言わないなんて、何か深い考えでもあるのかな。


 「わかった。ありがと!!」

 「なにか本人から連絡あったら私にも教えてね」

 「おう! 任しといて!」


 親指を立てて彼女のもとを去る。栗ちゃんは教室の入り口に背を預けて立っていた。頻繁に通り過ぎる人に話しかけられて、笑顔で返して、また真剣な顔に戻る。


 「栗ちゃーん。帰ろ」

 「おー」


 いかにも適当な返事をして、栗ちゃんが歩き始める。歩きスマホ、危ないのに。