ぽつぽつと言葉を紡いでいく。

 祖母に嫌われていること、家での居場所がないこと、そのうち養子に出されるであろうこと。

 それから、もうあの家を出ていきたいということ。

 最後に、俺が保健室に入るなり突然泣き出したことは誰にも言わないでほしいということを伝えて、大きく息を吐いた。


 「こうして話してみても、楽にはなれませんでした。すみません、聴いていただいたのに」

 「いいのよ。自分が存在しているということを誰かに認識してもらいたいときは、みんな等しくありますから」


 いつもと同じ放課後。保健室で、先生と。

 何も変わらないはずの光景なのに、椅子や壁はひどく汚れて見えたし、外で部活をしている人たちはみんなふざけているんじゃないかと思えた。


 「ありがとうございました」


 深く頭を下げて、先生にお礼を言う。

 何も言わずに会釈を返してくれた先生を確認してから、締められていた鍵を開ける。