「天音、聞いてる?」


『僕には耳はありません』と言わんばかりに、
 天音は目の前にいる俺を完全無視。



「天音!」


 自分でも『珍しい』って思う程、
 声を荒らげた俺。



 天音は驚いたように顔を上げ
 
 重い前髪を耳にかけ


 純真無垢な王子スマイルを
 俺に飛ばしてきた。




 悪魔から一転、天使の微笑み。


 ホッとしたような……
 逆に怖いような……




「千柳さん、知ってる?
 最近のせっちゃんね、
 いい感じに変わってきたんだよ」



 せつなの話題、やっと来たぁ。

 俺は、最近の雪那のことも聞きたくて、
 天音を理事長室に呼んだんだよ!




 だって。


 綺月に『雪那ってどう?』聞いても。

 『普通』の一点張りだし。



 学園内でこっそり
 心美ちゃんを呼び留めて聞いても

「言いたくありません」って言葉を残して、
 逃げられたし。