「千柳、オマエってわかりやすいな」


「え?」


「今、雪那ちゃんのこと思い浮かべてただろ?
 ニヤケがキモイ」


「キモいって……」


 酷っ!

 俺は一応、キミの上司なんだけど。



「雪那ちゃんを封印する気ゼロの、
 ダメダメ男だな」



 氷牙、言いたい放題じゃん。


 俺、キミの雇い主なんだけど。
 給料下げるよ。



 でも、その通り過ぎて言い返せない。


 だって。

 学園で雪那を見つけた時の俺は、
 心の中が本当にヤバいから。



 特に雪那が、
 男の子に微笑んだとき。
 

 全校生徒なんて無視して。

 雪那の腕をガバっと掴んで。

 家に連れ去りたい欲求で
 頭の中が荒れ狂っているから。



 でもまだ、学園ではいろんな目があって

 俺の欲求にブレーキが
 なんとか掛けられるけれど。


 家では別。


 雪那が俺に微笑むたびに、抱きしめたくなって。


 俺の腕で包み込むたびに
 雪那を離したくなくなって。


 俺だけのものにしたくなる。