自分の心の痛みをごまかしたくて
 あえて声をスキップさせる。




「氷牙。俺って、
 雪那と離れても生きていけると思う?」


「100%ムリだな」


「だよね~~」




『千柳なら大丈夫!』って
 気休めを言われたら

 甘党の氷牙の口に、苦々コーヒーを
 流しいれてやろうと思ったけれど。




 氷牙にこぼした俺の声は、
 自分でも驚くほど、弱々しかった。



「俺さ……
 俺の心の中にいる雪那を……
 封印しようと思ってるから……」


「ガキの頃から
 雪那ちゃんへの溺愛が半端ない千柳に、
 そんなことできるわけ?」


「俺、なんでも要領よくできちゃう
 天才でしょ?」


「自分で言うな!」




 アハハと声に出して
 笑ってはみたものの。

 虚しさだけが増殖していく。




「まずは、雪那を瞳に映さない。
 声を聞かない」



 そうすれば、俺の心の崩壊は
 なんとか阻止できそうだし。




「決意揺るがして悪いけど。
 今日、千柳は、
 理事長として学園に行く日じゃなかった?」



 うっ!!

 そうなんだよねぇ……