☆千柳side☆
キッチンに入って行く雪那の背中を見つめ、
ため息が止まらない。
俺にとって一番の宝物。
それは間違いなく『雪那』で。
雪那が傍にいない人生を
俺が生きられるのか
自分でもわからないほど。
俺は自分の部屋に戻り。
スーツに身を包み。車に乗り込んだ。
アクセルを踏みながら
雪那の涙を思い出す。
俺が泣かせた。
雪那の心を、思いっきり傷つけた。
その現実が、苦しくてたまらない。
俺は子供の頃からずっとずっと
雪那の笑顔が大好きで。
思いっきり褒めて、甘やかして。
俺の想いが伝わるように
きつく抱きしめて。
雪那が他の男に奪われないように
自分を磨き続けてきたのに……
俺の命より大事な宝物を
自分から手放さなければいけないなんて。