なんとか紡いだ落胆声。


 私の心も、泥水の池にポチャッと落ち
 沈んでいくのがわかる。




 ――千柳様に、恋人がいる。

 その現実に、ショックを隠し切れない。



 でも、私はメイド。

 ご主人様の幸せのために
 お仕えするのが役目。


 
 ちゃんと言わなきゃ。

 『彼女さんと幸せになってください』って。



 千柳様好みの
 歯を見せるくらいとびきりの笑顔で、
 心から祝福しなきゃ!!




 頭ではわかっているのに。

 弱りきった涙腺は
 涙をどんどん溢れさせ。


 顔の筋肉は
 笑顔を作る気力すら残っていない。



「わかり……ました……
 朝ごはん……用意してきます……」



 私はキッチンに逃げ込み

 千柳様の前から消えるので
 精いっぱいだった。