「天音? 本当にそれでいいの?」


「僕にゾルックに入って欲しくて
 強引にレッスン受けさせてたのは、
 千柳さんでしょ?」


「そうだけど……」


「僕のこと、もういらなくなったの?」



 そういうんじゃなくて……

「天音は本当に大丈夫なのかなって……」


「怖いよ。
 だってアイドルとしてステージに立ったら、
 僕の過去を知ってる人たちが、
 好き放題SNSに書くでしょ」


 そうなるかもね……


「『男好き』『根暗』
 『いじめ』『陰キャ』『地縛霊』
 尾ひれつけまくられて、
 好き放題書かれるだろうな。
 でもね………………」



 天音はハサミを置くと

 綺麗な瞳を優しく揺らし
 俺に微笑んだ。



「僕の心が壊れて、闇に落ちていっても。
 千柳さんなら、
 絶対に、すくい上げてくれるでしょ?」


 あまね……



『信頼してます』と言わんばかりの、
 天音の瞳に見つめられ。

 嬉しくて。
 勝手に頬が緩んでしまう。