風の音、土の匂い、草の感触ーーー。僕ーーー修也が目を開けると、そこには見たことのない森が広がっていた。僕は地面にうつ伏せで倒れており、目の前に見える景色にただ戸惑う。

「ここが天国……?」

ゆっくりと起き上がった時、いつもより見えている世界が低く感じた。もともと僕は男にしては背が低い方だった。でもこの目線はまるで幼児のようだ。

「あれ?こんな服着てなかったはずなんだけど」

僕が自殺をする前に着ていたのは、グレーのスウェットにダブっとしたズボンだったはずだ。でも今、僕は泥汚れのついたボロボロの白い服を着ている。

とりあえず、歩いてみることにした。でも周りの景色はやはり見覚えがない。写真で見たヨーロッパにある森のようだ。

「天国ってもっと温かい場所だと思ってたな」

僕はそう思いながら胸に触れる。刹那、自身の内側から伝わる音に目を見開いた。僕は誹謗中傷に耐えられず、自殺したはずだ。なのに、体から心音が伝わってくる。そして温かい。