僕がノワールとして暮らし始めて数年経ち、十八歳を迎えた。そんな僕は今、男にしては長めの髪をちょっと結び、自分の瞳と同じ紫の装飾品がついたローブを来て机に向かっている。小説を書いているんだ。

この世界にも面白い小説はたくさんあって、読書好きの僕にとって嬉しいことだった。前世であれだけひどいことを言われたのにまた書きたくなって、この人生でも小説家という肩書きを手にしている。

魔法を学校でしっかり教わり、家族に敬語を使うことがなくなり、肩の力を抜いて生活できている。僕にはこっちでの生活の方が合っているみたいだ。

「う〜ん……。ちょっと休憩しようかな」

執筆が一区切りついたので、僕は背伸びをして自室からリビングへと向かう。リビングでは、お父さんとお母さんが熱心にテーブルに積まれた資料に目を通しているところだった。どうやら仕事中らしい。

お父さんとお母さんは、二人とも犯罪心理学者で、心理学を使って警察の捜査を手伝っているらしい。十歳くらいの頃に聞いた。