腰をずらしてうつむき。
 床に落ちたハンバーガーを拾うおれの肩を町田がつかんだ。
「いっ、てぇぇぇ」「加藤さん!」
「だから自分の力を考えろっていつ」
「も」は音にならずに消えた。
 肩をつかんだ指に、その握力だけで立ち上がらされた衝撃で。
「加藤さん!」
「…………った」
 痛みに身もだえるおれの肩を、さらなる衝撃が襲う。
 町田がバンバンおれの肩を叩いている。
「引っ張ってます。加藤さんを引っ張ってます、王女さまが」
「……ぅ……」
 ふざけるな。
 おれを引っ張ってるのはおまえだ、町田。
 おれはここにいる。
 おれはここから一歩も動かねえぞ。
「は…な、せ、こら」
 こんなときでも冷静に、人目をはばかって小声で訴える紳士なおれの手を、狼藉者の町田がつかんだ。
 げぇ――っ!
 おまえ、これ、普通に見たら、お手々つないだ高校生男子のランウエイだぞ。
 しかもおまえ、自分のバッグは席に置きっぱなしじゃねえか。
 知らねえぞ、おい!
 あ、あ、あ、あ、あ。
 おれのコーヒー。
 おれの芋。
 冷めた芋なんて、もう食い物じゃねえだろがぁぁぁ。