町田はそんなおれの現状を虎か五十嵐か、はたまた双方からか聞かされているらしく、土曜の昼飯は、おれの気分につきあうことに決めたようだ。
 公園でコンビニ飯だろうがファストフード店だろうが黙ってついてくる。
 もっとも、おれについてくるというより王女さんについてくるんだろうが。


「加藤さん――…」
 町田が店に入ってからどこかそわそわしていたのにはちゃんと気づいていた。
 でも町田がなにも言わないから放置して、おれは2階で見晴らしのいい壁際の席からの景色を楽しんでいたのに。
「どう…しよう」
 なにを?
 ハンバーガーに食らいつきながら町田を観察。
 町田はもはや中腰で店内をせわしなく見回していた。
「王女さまがいなくなりました!」
「…………」
 ほぉ。それはありがたい。
 挨拶もなしかよ、とは思うがな。
 口の中のバーガーを飲みこんで。
 芋に手を伸ばすおれを町田が唖然とした顔で見る。
 なんだよ。
「食べてる場合ですか!」
 場合だろ。
 昼飯を食いに来たんだから。
 芋をしゃくしゃくかじるおれの前で、ついに町田が立ち上がった。
 おれの足下でカサッと鳴ったもの。
 紙の包みごと町田の落としたハンバーガー。
「あーあー」