どんなに表面を取り繕っても心が丸見えだと思うと、おれも町田といるのはいっそ気楽だ。
「女が退屈してんのが見えないのは助かるよな。好きなことに集中できて」
「――――おれは、忠告しましたからね」
 町田が肩をすくめた理由は考えもしなかった。
 そう。
 自分が誰かに命綱の先を握られている。なんてことは。

 * * *

〔加藤さん 今日もお昼 いっしょしていいですか?〕
 毎度、土曜のたびに律儀に聞いてくるのはどうなのよ、と思うけど。
 町田を昼飯に呼んでもいいとまで言ってくれていた虎は、おやじの世話は完全に放棄して、昼飯を食い終わるとエアコン代節約のためと称して隣り町の図書館に出かけるらしい。
 本当かよと思いつつ黙っていてやる兄の心も知らず、いつの間に親しくなったのやら五十嵐との女子会ではっちゃけていて、もはや兄を気にするそぶりもしてくれない。
 飯代に小遣いが消える兄に同情すらしてくれない弟。
 この最後のワードが『妹』に変わるだけで、アリ寄りのアリ。
 実に女らしい。