「退屈してますよ、王女さまも」
「…………」
 退屈しとけ。
 おれは受験生だ。
 そうそうのんきに遊んでいるヒマはない。
 …と言いつつ、土曜の昼飯時を町田とすごすこの状況。
「そんなにあからさまに無視すると、ご機嫌をそこねちゃうと思いますけど?」
「どうせおれには見えないしな。関係ねぇよ」
 町田とは話せる王女さんと、王女さんといれば安らげる町田はwin-winの関係なんだろうが。
 …て、いうかな。
「おまえ最近、鈍くなったのか?」
 町田は木陰のベンチに座ったおれから遠く離れた、公園の真ん中の遊具エリアでニコニコ笑いながら懸垂に励んでいたのだ、さっきまで。
 ヘッドホンとグラスは制服のズボンの尻ポケットに差したなりで、今も額から流れる汗を白いタオルでぬぐいながらのんびりと風に吹かれている。
 見ているほうが暑苦しいさわやかさ。
「どうなんでしょうかねぇ……」町田の目はどこか遠くを見ているようだった。
「加藤さんに入れてもらうようになってから、王女さまのご機嫌には敏感になりましたけど」
「ああそうかい」
 おれの棒読みセリフにも笑っている。
「意外と子どもっぽいところがあるので――。おれは…楽しいですよ」
「それは誰のことだ?」
「さぁ。誰のことでしょう」
「ふん」