「どうしたの? 兄ちゃん」
 おれの気分には敏感な虎が二段ベッドの階段で足を止めた。
「なぁ、おまえ、ボランティアってどう思う?」
 唐突なおれの問いに、虎は「うーん?」と応えて天井を見た。
「駅前のお掃除をしてくれてるひとたちを見ると、余裕があって、すごいなーえらいなーとは思うけど。半端な気持ちで仲間にはなれないし。ぼくには…まだ、無理、かな」
「…………」
 思いがけなく真面目な返答に、ますます己の状況を思うおれ。
 余裕なんてないんだよ、おれも。
 町田は深刻な顔で『王女さまは、あのひとと残りました』と告げた。
 だから?
 そもそも見えない、感じないおれには、そんなのはどうでもいいことだ。
 どうでもよくないのは町田が言っていたこと。
 王女さまは『きっとあのひとを助けてほしいんですよ』だと?
 助ける? 誰が?
「兄ちゃん」虎が階段からひょいと下りて、机の前で地蔵になっていたおれの首に温かな腕をまわしてきた。
「ぼく、役に立てる? なんかね、今そんな気がした。――変?」
「…………」
 不感症なのはおれだけなのか。
 今度は虎に頼んだかよ。