「あら、碧斗くん瑠奈ちゃん。おはよう」
「あぁ美樹さん。おはようございます」
「もしかして……二人、付き合ってるの?」
「まぁそんなとこです」
そっと碧斗の横顔を盗み見る。
目に悲しげな色が浮かんでいるように見えるのは、私の気のせいだろうか。
急に顔から熱が冷めていく。
碧斗はまだ美樹さんのこと、引きずってるんだ。
わかりきってたことなのに、なんでちょっと落ち込んでるんだろ。
「じゃあ、いってらっしゃい」
「いってきまーす」
それでも私には、やるべきことがある。
この時私は、すでに自分の気持ちに気付いていたのかもしれない。
でも知らないフリをした。
気持ちは言葉にしなければ、存在しないのと一緒。
望みのない恋なんて、無かったことにすれば傷つかない。
そうやって、自分を守っていたんだ。