「おい、巴山!ボヤっとしてんじゃねぇよ!」

真昼間の体育館にバスケットボールのダムダムした音が響く。
この音が苦手だ。
ていうか、体育館に響く音全般苦手。
暑苦しいし、とにかく煩い。
急かすような気分にさせる体育館シューズのキュッキュッという音。
ダムダムダムダムと続く面白くもないドリブルの音。
パシッと手に納まったパスの音だけが耳に心地いい。
それがまた、気持ち悪い。
そして何より、俺に向かう怒号の数々。
「巴山!ほら動けよ!」
「巴山ー!サボるな!負けるー!」
別に、僕1人いなくても負けなくない?
確かに、邪魔な位置にいるかもだけどさ。
誰かにとっては。
でも、必要最低限、ラインのスレスレにはいるし、ほぼここに来るやつもいない。
ほぼほぼ誰の邪魔にもならないベストポジション。
最高じゃない?