「平気?」
わたしの前にしゃがみ込んだ星原くんが、当たり前に手を差し伸べた。「…、うん」と短く返しその手を握る。ぎゅっと力を込めると、星原くんはわたしの身体を起こしてくれた。
山岸さんにクズ扱いされた二人は、ついに耐えきれなくなったのか、山岸さんが星原くんの登場に気を取られている間に鞄をもって、パタパタと足音をたてて教室を出て行く。
たぶん、泣いていたと思う。
それが恐怖からくるものか、はたまた、仮にも友達だったからこそのショックで泣いているのかは、わたしには理解する気にもなれなかった。
「……あのさぁ星原くん、そのゴミとどういう関係?」
「ゴミ?」
「っ、芽吹のこと!」
わたしを背中に隠すように立つ星原くん。そんな彼に、山岸さんはいら立ったように声をあげた。
沸々とこみ上げる怒りを必死に抑え込んでいるのだと思う。ぎりり…と唇をかみしめる山岸さんから、それがひしひしと伝わってきた。
「あぁ…」とぼやき、くしゃくしゃと髪を掻いた彼が、ちらりとわたしに視線を向ける。
ふいにあった視線に、すこしだけ胸が鳴った。