「…はぁ?なに、あたしの言うこと聞けないわけ」

「…、そ、それは、」

「もおー………、なんなのよどいつもこいつも」




山岸さんがチッと舌打ちをする。
苛ついているのがひしひしと伝わってきた。



彼女はいったい何にイライラしているのだろう。

わたしの発言はたしかに彼女のプライドを刺激してしまったのかもしれないけれど、それにしても一気に情緒が爆発しすぎではないだろうか。




果たして、わたしが素直に土下座したところで彼女は機嫌を取り戻すのか。


基本的に無意味なことはしたくない。

星原くんとわたしの過ごした日のことを汚らわしい世界と同じにされたことがなんだか無性に嫌だったので、ほんの少し言い返して終わりにするつもりだった。




それが、どうしてかこんなに面倒なことになってしまったのだ。




わたしがただ、なんの感情も込めないまま床に額をつけて謝って山岸さんが満足して帰ってくれるなら、土下座なんて安いものだと思う。



けれど、今の彼女の様子をみていると、そう簡単に怒りを納めてはくれなそうだった。