彼女が星原くんのことを好きだから、隣の席になったわたしに嫉妬しているのだと思っていたけれど、すでにそうではなくなっていたらしい。
彼女はわたしのことが嫌いだ。
理由に星原くんが関わっているのは事実かもしれないけれど、それ以前に、「芽吹」という害虫をただ駆除したいだけなのだということはなんとなくわかった。
「芽吹って優等生だと思ってたけど、裏でやることやってるタイプだったんだね」
「…は、」
「ねえ。星原くんとヤッたんでしょ、あんた」
まだ教室に残っているクラスメイトに聞こえないようにか、山岸さんは珍しく声を潜めて耳打ちをした。「正直どんな感じだったぁ?」と聞かれ、思わず眉を顰める。
山岸さんはひとつ思い違いをしている。
彼女は、わたしと星原くんが身体の関係を持っていると思い込んでいるようだ。先週の金曜日に一緒に居なくなったのがその証拠だと、そう言っている。
もちろん、わたしたちの間にそんな事実はないし、スキンシップだって必要最低限だった。お互いの感情を共有して星を見ただけ。なにも、そこに特別なものは無い。
けれだ、わたしもまたひとつ思い違いをしていた。
「ね。どうやって星原くんにヤラせてもらったのか教えろよ」