「でも、過去はちがう」
現実を生きるわたしたちに、過去を変えることは出来ない。どう足掻いたって 後悔を無くすことは出来ないのだ。
わたしの過去もそうだ。
両親に反抗せず生きていたら。両親の普通をちゃんと受け入れて、もっと笑っていられたら。
そうしたら、真面目に予備校に通っていたかもしれない。事故は起きなかったかもしれない。あんな御守り以外に 母の遺品があったかもしれない。
両親は帰ってこない。他に遺品もない。
話したってどうにもならない、それが過去だ。
「どうにもならない後悔ってさ、どんどん人から希望を奪うんだ。人生の軸が狂って、負の感情でしか動けなくなる」
「…うん、そうだね」
「本当にクソでゴミなのは、多分、おれなんだよ」
「……、星原くん」
「……秘密ばっかりあったってどうしようもない。ただ苦しいだけでさ、早く解放されたいって思うよ。解放されて、それから、さっさと死にたい」