「…は?」

今の状況を簡潔に説明しよう。

彼が僕を押し倒した。

そこまではまぁ取り敢えず理解はできた。

ただ彼がなぜ馬乗りになる必要が
あるのだろうか。

そのまま僕に覆い被さる。

…いわゆる床ドン?

というやつであろう。

瞬きをしたその一瞬、両腕を持ち上げられ彼のゆるく締めていたネクタイで拘束される。

何もできず僕はされるがまま。

彼はそのまま僕の顎をガシリ、と掴む。

「…たかが人間が僕にそんな口きいていいと
 思ってるの?」

少し力が強まり、彼は僕の口に親指をいれる。

「ぁ、が…」

声にならない声、とはこのことだろうか。

少しイラッときたので睨み返した。

彼はその僕を見て、
そのまま反対の手で僕のシャツのボタンを外す。

すると、あろうことか、ガブッ、と僕に噛みついた。

「んっ…!!」

しばらく数分はずっと噛んではやめ、噛んではやめ、を繰り返していた。

その度、望んでいない声が僕の口から漏れる。

最後にぺろり、と首を舐めて離れる。

「…自分の立場、分かった?」

そういって僕の上から退く。

しかし拘束は解かずに。

彼、レウは僕のお腹をつつ、となぞって言う。

「君、女の子でしょ?それも人間の。そんな君が僕にどうやって勝とうって言うの?」

ニヤリ、と怪しく笑う彼。

僕はキッと睨んだつもりだったが彼には無効化なようで、さっき噛まれた首をグッと押される。

少し痛みを感じて、「うっ」と唸る。

女子とバレている以上、なめられ続けるだろう。

正直悔しいが何もできないのも事実。

どうにかしてこいつをぎゃふんと言わせてやる!

どこかの主人公のようなお決まり台詞を心の中で吐き捨てて彼に言う。