「ねえ愛美さん。あなたは今日、これで学校終わりよね?」

「えっ? ……あー、うん。補習受けなくていいし」

(やっぱり)

 愛美の予想は的中したようだ。珠莉はどうやら、愛美に叔父の案内役を頼むつもりらしい。

「なになに? 何のハナシ?」 

 いつの間にか、さやかも廊下に来ていた。

「じゃあ、あなたに叔父の案内をお願いするわ。補習は四時半ごろ終わる予定だから、その頃に私を電話で呼んで下さいな」

「ちょっと珠莉! 愛美にだって断る権利くらいあるでしょ!? そんな一方的に――」

 さやかが愛美を擁護(ようご)する形で、二人の間に割って入った。

「いいよ、さやかちゃん。珠莉ちゃん、わたしでよかったら引き受けるよ」

 とはいえ、嫌々でもなかった愛美は(こころよ)く珠莉の頼みを受け入れた。
 実は内心、珠莉の叔父という人物がどんな人なのか興味があったのだ。

「いいの、愛美? 引き受けちゃって」

「うん、いいの。今日は宿題もないし、部屋に戻っても本を読むくらいしかやることないから」

「あら、そうなの? ありがとう、愛美さん。じゃあお願いね。――さやかさん、補習に遅れますわ。行きましょう」

「え? あー、うん……。いいのかなあ……?」

 さやかは少々納得がいかないまま、後ろ髪をひかれるように珠莉に補習授業の教室まで引っぱっていかれた。