「そうですよね……」

 愛美も頷く。たまたま純也さんがアウトドア用のテーブルを持ち込んでいたからよかったものの、やっぱりテーブルはないと不便だ。

「よし。東京に帰ったら、家具屋で小さなテーブルを買ってこっちに送るとしよう」

 けっこう真剣に純也さんが言うので、愛美は吹き出した。

 愛美はしばらくカーペットの上に座り、クッキーをつまみながらカフェオレをすすって、原稿を読む純也さんの姿を見ていたけれど。何となく手持ち無沙汰になってしまった。
 スマホは自分の部屋に置いてきたし……。

「――ねえ純也さん。まだかかりますよね?」

「うん、多分ね。どうして?」

 原稿から目を離さず、純也さんが答える。

「ちょっと、さやかちゃんに電話してこようかと思って。――いいですか?」

「いいよ。行っておいで」」

「じゃあ……、ちょっと失礼して。そんなに長くはかからないと思います」

 愛美は自分の部屋に戻ると、スマホでさやかに電話をかけた。

『ああ、愛美。メッセージ見たよ』

「うん、知ってる、ちゃんと返信来てたし。――今大丈夫? もうすぐ消灯でしょ?」

『大丈夫だよ。長電話しなきゃね』

 それなら大丈夫だと、愛美は返事をした。そんなに長々とするような話でもないし。

「あのね、さやかちゃん。……もしかして、怒ってる?」

『はぁ? 別に怒ってないよ。なんで?』

「なんか、さっきもらった返事が……。なんていうか、『リア充爆発しろ!』的な感じだったから。ちょっと違うかもしんないけど」

 愛美がそう言うと、さやかはギャハハと笑い出した。

『違うよー。あたし、マジで嬉しかったんだから。愛美の初恋が実って、親友としてめっちゃ嬉しかったんだよ。それはアンタの考えすぎ』

「ああ、なんだ。よかったぁ。でも、やっぱりさやかちゃんの言う通りだったね」

『純也さんがもう告ったも同然だってハナシ? だって、見りゃ分かるもん。純也さん、愛美にゾッコンだったじゃん。……あれ? アンタは気づかなかったの?』