そうして、優勝賞品は宿に運んでもらえる手筈でいること、明日はジェイミーに情報を聞いてみようなどと話を続けていた時のこと。

「あれ?」

 ノアが窓の外を見て首を捻った。

「どうしたの?」

「ねぇ、アーシェ。ここ、街の中じゃないよね?」

「どういうことだ?」

 ザックが訝しんで窓へと視線を向ける。

 アーシェリアスも同じように景色を確認すると、確かに木々が連なる街道があった。

「街の外に店がある……のかな?」

 戸惑いつつ零したアーシェリアスに、ザックは「いや」と否定する。

「治安の問題もあって、基本的に街の外に店のみが建っていることはない」

「だ、だとしたらどこに向かってるの? 宿場町?」

 ありえないと思いながらもアーシェリアスが尋ねる。

 するとザックは「一日かけて祝いに向かうのか?」と肩をすくめた。

 そうだ。

 エスディオから宿場町までの距離は近くない。

 ならば、なぜ馬車はエスディオを出たのか。

「アイザック様、御者に聞きましょう。すまない!」

 そう言って、エヴァンが背後にある小窓を開けようとしたのだが。

「ん? なんだ? 壊れているのか?」

 御者と会話できるように設置されているそれはピクリとも動かない。

 ならばあちらから開けてもらえたらどうかとエヴァンはノックする。

「聞こえるか⁉」

 得意のビッグボイスを響かせるも反応はない。

 なにかおかしい。

 皆が同じ思いを抱いた時だ。