ミアの話を聞かず、一行はそそくさと馬車へと向かう。

「ちょ、ちょっと皆さん!」

「ミア。行き先は伝えてあるんだろう? それなら問題ない。僕たちは後の馬車に乗っていくぞ」

「で、でもっ」

 焦るミアの様子をアーシェリアスは不思議に思う。

(ふたりで乗って、何か話したかったのかな……)

 それが破滅エンドに導かれるものだとしたら、ふたりになるのは避けた方が正解かもしれない。

 そう考えたアーシェリアスは、ほんの少し安堵して仲間たちと共に馬車に乗り込んだ。

「御者さーん、出してくださーい」

 ノアの声を受け、御者が頭を下げて答えた。

 二頭の馬を繋ぐ手綱が引かれ、馬車が動き始める。

「で、目的地はどこなんだ?」

 腕を組んで座るザックが、隣のアーシェリアスに確認する。

「宿泊先のオーナーに頼むって話していたけど、どこかは聞かされてないの」

 会話を思い出しながら説明すると、エヴァンが「ふむ」と顎に手を添えた。

「まあ、御者に前もって伝えてあるから何事もなく出発したんだろうな」

「そうだねー。それよりザックとエヴァン。ふたりとも女装してるの忘れてない? 話し方も振る舞いも男に戻ってるけど」

 ノアが突っ込むも、ふたりはどこ吹く風といった様子で「別に今は誰も見ていない」「人は見た目でしゃないぞ、ハッハッハ」と答えて終わった。