「希少な食材、レインボーコーンです!」

 司会者がひとつ手に取って掲げたのは、カラフルな実色のとうもろこしだ。

 レインボーコーンはまたの名をグラスジェムコーンという。

 発祥はアメリカのオクラホマ州で、自然交配の改良によって生まれたもの。

 甘味が少ないので、ポップコーンなどに向いているとうもろこしなのだが。

(確かに! 確かにファーレンではかなり珍しい食材だわ! だけど手に入らないわけではない)

 そもそも、幻の料理を作る為の食材が何であるか見当がつかないままなのも痛いところ。

『幻の料理を作るのに必要な食材』というお墨付きの食材が欲しい。

 けれど、司会者の説明では特にそのようなことは語られず、大盛況の中コンテストはお開きとなった。

(灰鷹が盗んだレシピ本に載っているものが本物だったら、おのずと食材も判明すると思うけど……)

 ジェイミーは何か手がかりを得ただろうか。

 早く亡き母との約束を果たすべく、盗まれた本を早く手に入れて幻の料理であるかどうか確認したい。

 アーシェリアスの中で想いが膨れ上がる。

(それに、幻の料理を食べて幸せになれれば、きっと破滅エンドフラグも消え去る!はず!)

 舞台袖で幻の料理レシピへ思いを馳せているアーシェリアスに、ザックが不思議そうな目で見つめた。

「行かないのか?」

「はっ、ごめん。そのままお祝いパーティーが開かれるんだっけ?」