「花はまだ届きます。配置は決められた通りに」
エントランスで声を張る。スタッフたちの元気の良い返事が返ってきた。奥から、本社社員がひとり駆けてくる。
「古道リーダー、市議の方がパーティー前にぜひお会いしたいと」
「今日はそんな暇ないわよ。どうせ、社長のひとり娘に顔を売っておきたいだけでしょう」
ぶつぶつ文句を言うと、私が視線を向ける前に優雅が代わって答える。
「今は慌ただしくかえって失礼になります。パーティー会場でご挨拶したい旨、伝えてください」
「承知しました」
社員が戻っていき、私は優雅を見あげた。
「ありがとう」
「いいえ、まだあなたが見回らなければならないところはたくさんありますからね」
今日は私が手掛けてきたリゾートホテルの開業パーティーである。このパーティーを完璧に仕上げて、私の初仕事は完遂だ。そんなわけでここ数日は大忙し。さらに今日は朝から、あちらこちらと飛び回っている。
「次はキッチン?」
「ええ、料理のうち何点か変更が入りましたので」
「優雅に任せておきたいけど、そうもいかないわね」
「お任せくださってもいいですよ」
私はちらんと優雅を見上げる。にこにこいつもの笑顔をくっつけている優雅。
「いいわ、私の仕事ですもの」