「ちょっと……頭痛くなってきた。色々、おかしくない?」
「愛菜さんは不快に思うでしょうから、本来はこういった事情をお話する気はなかったんです。それに、一緒にいられるなら愛情で結びつきたかったので」

しれっと優雅は言う。

「さらに言いますと、現在の榮西の問題で、古道社長は兄を心配して僕に戻れと言っていますが、今日はっきりお断りして参りました。どうしても戻れと言うなら愛菜さんをさらっていきます、とも」

いっきに押し寄せてきた情報に、私はふーとため息をついた。横で、優雅が楽しそうにくすくす笑っている。

「ね、愛菜さん。浅はかだったでしょう? あなたが気を利かせたところで無駄なんです。僕とあなたは結婚するほかない。逃げ場なんか、最初から用意していないんですから」

そう言って覆いかぶさってくる。
真上から見つめる切れ長の美しい瞳。愛欲に歪んだ、悪い男の瞳。

「僕の長い長い片想いを叶えてくださいますね」

なんて、生意気な部下だろう。罠を張り巡らせて、こっちが落ちてくるのを気長に待ってくれちゃって、さらには甘い言葉で垂らし込んで……。気に食わないったらない。