「なぜ、そこまでしてKODOに居残るのよ。榮西に戻った方があなたの立場的にいいでしょう」
「何度でも言いますが、愛菜さんがいるからです」
「だ~か~ら~、それがわからないんです! どうして私なんですか? あなたと出会って十年くらいですけど、私たちがこんなに話すようになったのは私KODOに戻ってからでしょう?」
優雅が顔をあげる。そのまま私の唇にキスをした。
とろとろに幸せそうな表情をしている。
「少し、昔話をしてもよろしいですか?」
「いいけど……」
「昔々、僕が小学生のとき、榮西グループのトップだった父が倒れました。前年に母を病で亡くしていた僕と兄は、小五と中一。父の部下たちが賢明に会社を支える中、僕らは何もできませんでした。父は身よりのない人でしたので、親戚もなくて」
優雅が私の横に寝そべるように身体を横たえる。まるで寝物語をしているみたいだ。
「大人たちは僕と兄を気遣う余裕もありませんでした。父は緊急手術から意識が戻らず、僕たちは家から遠い病院に見舞いもいけない。どころか、家に残されたお金が尽きてから日々の生活すら困り、途方に暮れていたんです。そこにやってきたのが古道隆一郎社長です。父の大学の後輩で、仲が良かったという古道社長は、僕らの生活を整え、さらには榮西グループの父の部下たちを叱咤し、一時的に舵取りを手伝ってくれました。これは並大抵のことではなかったと思います」
父がそんなことをしていたとは知らなかった。それが優雅の言う恩。自身でも会社経営をしながらでは、確かにものすごい労力だっただろう。
「何度でも言いますが、愛菜さんがいるからです」
「だ~か~ら~、それがわからないんです! どうして私なんですか? あなたと出会って十年くらいですけど、私たちがこんなに話すようになったのは私KODOに戻ってからでしょう?」
優雅が顔をあげる。そのまま私の唇にキスをした。
とろとろに幸せそうな表情をしている。
「少し、昔話をしてもよろしいですか?」
「いいけど……」
「昔々、僕が小学生のとき、榮西グループのトップだった父が倒れました。前年に母を病で亡くしていた僕と兄は、小五と中一。父の部下たちが賢明に会社を支える中、僕らは何もできませんでした。父は身よりのない人でしたので、親戚もなくて」
優雅が私の横に寝そべるように身体を横たえる。まるで寝物語をしているみたいだ。
「大人たちは僕と兄を気遣う余裕もありませんでした。父は緊急手術から意識が戻らず、僕たちは家から遠い病院に見舞いもいけない。どころか、家に残されたお金が尽きてから日々の生活すら困り、途方に暮れていたんです。そこにやってきたのが古道隆一郎社長です。父の大学の後輩で、仲が良かったという古道社長は、僕らの生活を整え、さらには榮西グループの父の部下たちを叱咤し、一時的に舵取りを手伝ってくれました。これは並大抵のことではなかったと思います」
父がそんなことをしていたとは知らなかった。それが優雅の言う恩。自身でも会社経営をしながらでは、確かにものすごい労力だっただろう。