「毎日、あなたをオフィスで探すでしょう。あなたの声を遠くで聞いて、幸せに思うでしょう。あなたとこうして過ごしたわずかな思い出を胸にこの先もあなたのことだけを愛して、あなたの城であるKODO開発の発展に尽力します」
「……頭がおかしいわ。優雅には、優雅にふさわしいポジションと仕事があるでしょう」
「僕が選んだのがあなたであるというだけです。兄も納得しています。絶対に、あなたに何を言われようとも離れません。……愛菜さん」

優雅が顔をあげ、私の方を見た。
泣きそうな顔をしていた。

「愛しているんです。あなたの傍にいたい」

気づけば、私の瞳から涙が溢れていた。
ああ、情けない。悪役の仮面なんて、もろいものだわ。強く深い愛情を向けられ、一瞬で崩れ落ちてしまった。

「馬鹿なの? あなた」

私は震える声で言った。

「はい、馬鹿なんでしょう。ずっとあなたしか見えていないので」
「理解できない。榮西グループに戻りなさいよ」
「嫌です」

優雅が私の腕を引く。逃げる余地もなく、胸に抱かれ息もできない。

「あなたの本心が聞きたい。取り繕わない愛菜さんの言葉が聞きたい」
「優雅……!」