「あなたは戻る場所がある。KODOを出てそこへ帰りなさい。あなたなんか捨ててあげるわ。私の前から早くいなくなって。あなたはそれでいいと、最初に言ったのだから」

物語のエンディング、ひどいことばかりした悪役令嬢は投獄されたり、落ちぶれてしまったりするのよね。死刑なんてこともあるらしい。天罰覿面というやつ。
別に好んで悪役やってないわよ。そういう役回りが回ってきただけ。今だってそう。

優雅のことが、私はたぶん好きなのだ。
私みたいなひねくれた女を、大事に大事に愛してくれる理解不能の部下。彼のことを、私もちゃんと愛してる。
だからこそ、あるべきところへ戻ってほしい。

私は私で、自分の人生のヒロインになれるよう、ひとりで頑張る。だから、あなたはあなたで、自分の道を行ってほしい。私のために畳んだ翼を、もう一度広げてほしい。

「愛菜さん、僕はKODOをやめません」

優雅は低く怜悧な声で言った。視線はテーブルのワインに落ち、こちらを見ない。

「聞き分けなさい。左門優雅」
「いえ、無理です。あなたのチームを外されても、職場で疎まれても、口も聞いてもらえなくても、僕はKODOにいます。あなたのことを見つめ続けます」

優雅は拳を硬く握りしめている。その拳が震えているのがわかった。伏せられた横顔がありとあらゆる感情を映している。