「本音を言えば、いっそ、KODOを辞めてもらいたいと思っているのよ。あなたがいては、私の社長就任の障害になるかもしれないもの」
「愛菜さんは……地位にこだわらないとおっしゃっていたように思いますが」

優雅は穏やかな口調で言うが、私の態度に不満があるのは伝わってくる。私は顔を歪めて笑って見せる。

「気が変わりました。やはりKODO開発を継ぐのは私です。極端な話、あなたは邪魔なんです、左門優雅」

真っ直ぐに優雅を見つめて言いきった。生半可な言葉は発さないし、迷った表情もしない。

「あなたと結婚はしません。KODOを榮西に身売りする気はないの」

その言葉に、優雅が目を見開いた。それからゆっくりとうつむき、呟く。

「……僕の身元をご存じでしたか」
「少し前からね。今日、あなたと父の話も聞きました。立ち聞きだったのは申し訳ないと思うわ」

私は言葉を区切り、優雅を見据える。

「私は父と違う。あなたのお兄様にもお父様にも恩義はない。KODOを榮西の傘下になどとは思わない。あなたとの婚姻がそういった将来を狙ったものなら受けるわけにいかないのよ」
「誓って、そのようなことにはなりません。僕は兄の元へ戻る気はなく、KODO開発でこの先も……」
「未来のKODOの主である私が言っているんです。あなたは不要だと」

私は厳しい口調で言い切った。