私と小林くんがいい感じなのは、周りにバレてるなと思っていたけれど、これって嫉妬の逆恨み? うわあ、若さしか取り柄のない女って怖いわあ。小林くんなら私のこと大好きみたいですけど。今度デートしますけど。

名前が出たせいだろう。人垣の中にいた小林くんに注目が集まる。それまで空気に徹していた小林くんがそろりと輪から出てきた。この時点で気付けばよかったのだ。小林ヒカルという男の器の小ささに。
しかし、私は助けにきてくれた未来の彼氏に、安堵の息をついてしまった。

『小林さんっ! 私っ、ずっと小林さんが好きで! あなたにしつこくする古道さんからあなたを救わなきゃって……!』

栗原りりかが泣き崩れた姿勢から腕を伸ばし、叫んだ。

『私を選んでください! 小林さん!』

特大のため息が出そうだった。なによ、そのわざとらしいヒロインムーヴ。今どきディ●ニープリンセスだってやらないわよ。
そう思っている私の目の前で、小林くんが栗原りりかに駆け寄り、彼女をひしと抱き締めた。

んん?

私の頭の中をハテナが埋め尽くしたことは言うまでもない。
ええ? そこであなたが栗原りりかを抱き締めちゃったら、私がしつこく色目を使ってたって嘘が事実として認知されちゃうじゃない。説明の機会もないままに。
っていうか、小林くん、私のことが好きだったんじゃないのーーー!?
愛する人をゲットしたヒロイン・りりかは泣きじゃくりながら言う。

『私、ずっとつらくて! 古道さんにいじめられる毎日が! でも小林さんが来てくれて世界が変わったんです!』
『ごめんね、りりかちゃん! 助けてあげられなくて!』

なんと小林くんもそんなことを言いだした。