優雅はいつも軽い接触しかしてこない。今もハグ以上してこないので、もどかしいような……。私はせめてもの愛情表現に、そっと抱き締め返す。
こんな瞬間、ちょっと幸せを感じてしまう。愛される幸せというのだろうか。
男の人の腕の中に閉じこめられ、甘やかされているのは、上質な幸せだ。

「はやく、愛菜さんと夫婦になりたい」

優雅がささやく。私は背中を撫でながら答える。

「そう……ですか……」
「照れ隠しはやめて、もう少し嬉しそうな返事をしてくださいませんか」
「照れ隠しじゃありません!」

撫でるのをやめてぽこぽこ叩いてみても、優雅はびくともしなかった。

ふと、思う。私と優雅の正式な婚約はいつになるのだろう。両家の挨拶とかそういうものはいる? それとも、父の一存で決まるもの?
それにしたって、父は私に何も言ってこない。婚約のことも、先々の結婚のことも。
やっぱり匂わせてるくらいじゃ駄目なのかな。恥ずかしいけれど、両親と話してみよう。
正式に婚約者の状態になれば、きっと優雅はもっと喜ぶ。
そんな優雅の顔を私も早く見たい。