仕事をしている分には、苛立ちがまぎれていい。
一方で、優雅がどんな顔をしているかが気になった。小林くんにあからさまな敵意をむけている様子はない。それはそうだ。彼は私と小林くんに何があったか調べている様子だけれど、だからといって、小林くんに攻撃的になる理由はない。優雅は私や小林くんよりずっと大人だ。

拍子抜けするほど三日は何事もなく過ぎた。ずっと顔を突き合わせることもない。現地視察と打ち合わせで何度か会っただけだ。彼らしい前のめりな意見も何度か聞いたが、それはそれで今の同僚たちには可愛がられているようだし、問題ない。私からしたら、彼はもう過去の人間なのだ。気にするのはやめよう。

……なんて大人ぶって言いましたが、実際はそんなに簡単に割り切れなかったりする。
正直、いまだに腹は立つ!

仕事を辞めたのは私の判断だけど、あの断罪イベントには女としてのプライドをズタズタにされた。なにしろ、私が新人をいじめていたという事実無根な噂付き。さらにはしっぽを振っていた犬に噛みつかれたようなものだ。

ああ、こんなこと考えちゃうから私って性格悪いのよね。でも、考えずにはいられない。

精一杯のメンタルケアとして、小林くんの異動が、私が辞めるハメになったあの事件に対する余波だと思っておこう。一応、部内のエース退職のきっかけをつくったわけだし?
いや、溜飲を下げるためだけでなく、実際彼の異動は早過ぎる。私の件だけでなく、職場で何かあったのは間違いないだろう。