「どんなことからも、僕が愛菜さんを守ると言ってるんですよ。愛の言葉です。響きましたか？」

思わず、少しだけ笑ってしまった。
変な男。ここにきて、私を笑わせようとしているのか、本気で口説こうとしているのか。
それでも、優雅の言葉で、嫌な思い出が少しだけ紛れた。

「まったく響きません。でも反省はしました。もう大丈夫ですから、あなたは部屋に戻ってください」
「愛菜さんの体調がよろしくないので、今夜はここに残ろうかと」
「結構よ。出て行って」
「弱ったあなたを一晩中介抱し、見守りたいです。想像すると胸がときめきますね」
「やっぱり変態……。出て行きなさい、命令です」

優雅が笑顔で立ち上がった。やはりからかっている。

「そうですか。それは、とても残念」

ふいに、私の髪に触れる大きな手。拒否してやろうにも、守ってもらったし、さっきまで肩も借りていた。みっともないところを見せ過ぎた手前、振り払いづらい。

「少しだけ、ご褒美をくださいね」

髪の毛をひと掬いし、そこにキスを落とす優雅。私はぶわっと真っ赤になった。
怒鳴って突き飛ばす前に、優雅が素早く私から離れる。

「名残惜しいですが、今日はこのへんで。おやすみなさい、愛菜さん」

優雅はいつもの笑顔に戻り、部屋を出て行った。私はしばし固まり、それからぼすんとベッドに転がった。
アルコールでくらくらする。そして、びっくりして興奮したせいか、すでに二日酔いみたいに頭が痛い。

『あなたはとても魅力的な女性なんですから』
『最終的には僕が守ります』

優雅の言葉がくるくる回る。ストレートな言葉で揺れてしまうなんて、私チョロすぎない？
ああ、でもちょっとだけ、本当にちょっとだけ嬉しかった。
胸の中の失恋で痛めた部分に、彼の言う愛の言葉はわずかに響いた。