「優雅、あなたでしょう。キシダ建設に三田河のことを密告したの」
「報告ですよ。愛菜さんが、スケジュールの件で一度がつんとやってくれましたので、今回はキシダ建設もかなり協力的です。下請けの社長がセクハラまがいの飲み会をしていると知れば、慌てるでしょう」
「タチが悪いと言いたいところだけど、ありがとう。隙を見せてすみません」

私はよろりと、ベッドに歩み寄った。そのまま勢いよく座る。吐き気はまだ強い。横になっても寝られないだろうが、横になってしまいたい。

「気を付けてくださいね、愛菜さん。あなたはとても魅力的な女性なんですから」
「……私の落ち度だったことは認めるわ。申し訳ない。助けてくれて感謝しています」
「僕が言いたいのは、あなたは自分で思うよりずっとずっと美しく艶やかで、多くの人間を惑わせる要素を持っているということです」

私は思わず鼻で笑ってしまった。私がどうしてここにいるのか、この男は知らない。
三つも下の男ともっと若い新人の女に、ダシにされて、居場所がなくなったのだ。三十歳の偉そうで可愛げのない女は、最後は誰にも必要としてもらえなかった。

「わけのわからないことを言わないで……」

卑屈なことは言いたくなかったので、低く威嚇するように呟いた。

「いいんです、あなたが誰を惹きつけようが。最終的には僕が守ります」

歩み寄った優雅が片膝をつき、私を見上げる。本当にお姫様に対する騎士みたいな所作だ。

「何を言ってるの」