懇親会を終了したとき、三田河はキシダ建設との電話中で席を外していた。
その隙に場を締め、私と優雅、部下五人は徒歩五分の駅前のKODOホテルに戻った。部下の手前、だらしないところは見せられない。私はエレベーターで部下たちと別れるまで、しゃんとひとりで自立していた。しかし、フロアに降り立つ頃には酔いで立っていられないくらいだった。
「ここまで自力でしたね。本当にあなたは人一倍根性がある」
優雅がくすくすと笑っている。手には私の部屋のキー。
「見栄っ張りって言いたいんでしょう? 肩を貸しなさい」
「いくらでもお貸ししますよ」
部屋に入るなり、私はユニットバスに駆け込み、ドアを閉めた。胃の中のものをすべて吐ききると、少しラクになった。しかし、まだ吐き気は続いている。
よろよろとユニットバスから出ると、優雅がタオルとペットボトルの水を用意していてくれた。
「ありがとう。助かりました」
ひと口水を飲むと、アルコールで脱水を起こしかけていた身体に水がしみた。まだ気持ちが悪くて少しずつしか飲めない。
「まともにあんなクズに付き合ってはいけませんよ。あなたのお酌した酒を、隙を見てたらいに捨てていましたから」
「え? そうだったの?」
どうりで、向こうは私ほど酔っていないわけだ。そこそこ飲める私がここまで酔っているのに、あのたぬきオヤジはどれほどの酒豪なのかと思っていた。
「最初からあなたをどこかへ連れ込む気でいたのでしょう。妙な薬などを盛られなかっただけよかった」