変化が起こったのは昨年の秋。ほんの五ヶ月前、部署に三つ下の小林ヒカルという男子が異動してきたことだった。

小林くんはなかなか目立った。アイドル系の可愛い顔立ち。身長は私より五センチ高い程度だけど、均整の取れたスタイルをしていた。他部署での功績から販促グループが引き抜いてきたそうだ。年の近い先輩として、私が色々と教えることになった。はっきりと指導係に任命されたわけじゃないけれど「頼むよ」と販促グループのリーダーに言われれば、断れない。
自分の仕事プラス後輩の面倒? 問題ないわよ、私を誰だと思ってんの、ちょちょいとこなしてやるわ、くらいの意気込みだった。

小林くんはやる気があった。実際指導してみたら、勢い任せなことも多く、客先への対応にヒヤヒヤする場面もあった。彼が若くやる気があるから、相手側も『頑張れよ』と許しているような状況。今までもそうだったんだろうなあ。

『客先に甘えちゃ駄目よ。性格じゃなくて、仕事ぶりで可愛がってもらいなさい』

私の注意に、彼は目を輝かせて答えた。

『はい、古道さん。俺、古道さんみたいになりたいです』

可愛いこと言ってくれるじゃない。尊敬されれば、私も悪い気分じゃなかった。
そのあたりを境に、小林くんは私に対して懐いた子犬のような態度を取るようになった。どこに行くにもついてくる。ランチや帰り道もだ。軽く飲みに行くことも二・三度あった。

『古道さん』

彼が私を呼ぶ声には、それなりの好意があった。私の勘違いじゃない。たぶん、周りで見ている社員も思っていたと思う。小林は、古道狙いだなって。

『古道さん、今度休みの日、出かけませんか?』

そんな誘いを受けたのは出会って三ヶ月の頃。普通にネイルとパーソナルトレーニングの予約があったから断ったものの、休日のお出かけとはなかなかの本気度だ。