東京ではあり得ないが、KODO開発社員用の駐車場は、会社から少し離れた土地を丸々買い上げている。県庁所在地なので、電車もバスも県内の他地域と比べれば本数はあるが、やはり車社会なのだなと感じる。私も自分の車を買うか、駅前にマンションを構えるか……。そこまで考えて、優雅のマンションもこの近くだったはずだと思いだした。

「あなたの車も会社の駐車場に?」
「ええ、社用で使うことも多いので、マンションの駐車場よりこちらに置いておくことが多いですね」

優雅は自分の車に案内し、また後部座席に私を座らせる。別に助手席でもいいのに、と思いつつ、あまり距離を詰めるのも嫌なので黙っておく。

「大学在学中からですが、愛菜さんはあまりこちらに戻られませんでしたね」

車は国道を走りだす。運転席から優雅が言うので、私は曖昧に「ええ」と答える。

「あまりこの土地が好きではありませんか?」
「嫌いじゃないですよ、生まれ故郷だもの。でも、いつか帰らなければならないと思うと少し重たくて……足が向かなかったのかも……」

反発したいという気持ちではない。なんとなく重たくて、進んで考えたい場所ではなかった。帰省は年に一度あるかないかだった。あんなことさえなければ、東京で勤め続けていただろうというのが本音。