*
そんなわけで、私は一週間、この新しい職場での立ち位置の確立のため仕事をしまくった。
正直、意地である。前職と東京から逃げ帰ってきたわけじゃない。社長の娘の座に胡坐をかきにきたわけじゃない。
それを証明しつつ、チームリーダーとして信頼に足る人物であるとアピールしなければならない。
見栄っ張りで外面しか気にしていない? 何を言うか、外面って超重要だから!
見た目や最初の印象で相手を判断する人間はとても多い。だから、私はまず印象操作をする。スタート時点でこれはまあまあ成功。
次は中身を伴わせなければならない。まったくの異業種の知識をこの一週間叩き込んだ。
毎日、遅くまで会社に居残ってタクシーで帰るものだから、さすがに両親はうるさく言いだした。三十の娘に過保護過ぎだと思うけれど、五十嵐営業部長に文句を言ったり、優雅を動かそうとすると面倒だ。『今だけ頑張らせて』としおらしく言っておいた。
でも、この調子で仕事状況までうるさく言われるなら、さっさと一人住まいのマンションを決めるべきかな。
そして、本日私は、定時後まだオフィスにいる。
普通に一週間じゃまだ理解しきれないことも多いのだ。意地を張って仕事ができないじゃ困るので、不明点は優雅を捕まえてガンガン聞いているけれど、実際に現場に出てみないとわからないこともある。
「愛菜さん」
後ろから声をかけられ、振り向くとそこに優雅がいた。