山口は困惑し、優雅を見る。優雅が答えるより先に、私が言った。

「山口さん、いかがですか?」
「は……はい。古道リーダーのおっしゃる通りにいたします」

私は頷き、あらためてチーム全員を見渡す。

「若輩ですが、この案件は仕切りを任されました。左門にサポートしてもらい、頑張りますので、皆も忌憚ない意見をお願いします」

場のムードがぴりっと引き締まるのを感じる。

「続いて、人事担当の小高さん、経験者採用についてでしたね。お願いします」
「はい、ご報告いたします」

私が会議を進行するのを、優雅はにこにこ見つめていた。適宜補足をしたり、担当が答えられない部分を補てんしたりする以外は、前に出ず控えている様子だった。

ミーティングは無事終了。ぞろぞろと会議室から出ていくチームのメンバーの顔は一様に変化していた。ひとまず、今日の及第点かな、と私は安堵の息をつき肩をまわした。すると、優雅が声をかけてくる。

「コーヒーをお淹れしましょうか?」
「結構よ。自分で自動販売機に買いにいくので」
「では、僕もご一緒します」

別にすぐに買いに行こうと思ったわけじゃないんだけど。流れで仕方なく一階エントランスに設置された自動販売機に向かう。以前、喫煙スペースだったと思しき場所には背の高いティーテーブルがふたつ設置され、いっとき休むにはちょうどいい場所になっていた。