何も言い返すことができない彼らを見た後で、
「西尾さん、行こうか?」
と、大国くんは声をかけてきた。

「あっ、うん…」

わたしが返事をすると、
「一応聞きますけど、本当に夫婦なんですよね…?」

不思議だと言う顔をした野田さんが聞いてきた。

「夫婦だよ?」

何を言っているんだと言うように答えた大国くんに、
「なのに、何でお互いのことを名字で呼びあっているんですか?

名前じゃなくて名字で呼びあっている夫婦なんてどこを探してもあなたたちだけだと思いますよ?」
と、野田さんは言い返した。

「えっ…」

「あっ…」

わたしたちはお互いの顔を見あわせることしかできなかった。

「えっと…」

「その…」

わたしたちは何も答えることができなかった。