とうとう白紙のまま迎えた個別面談。私は職員室の前で立ち尽くし、ため息をひとつ吐いていた。

現実逃避していても意味ないし、先延ばしにしたところで答えが出るとは思えない。

だったらさっさと面談終わらせよう。正直に『悩んでます』と伝えて終わらせよう。


いざ!!


《ガラララ》


建て付けの悪い扉を開けて、重たい足を前に前進させた。


「日頃頑張ってきた成果だな。指定校推薦、受けるか?」


『失礼します』の一言を発する瞬間、聞こえてきた言葉に意識が全て持っていかれた。


「生徒会長の役を務めて、更に成績優秀。内申点は問題なし。」


見間違いだと、聞き間違いだと思いたかった。


「吉澤なら、胸張って先生は送り出せるよ。」

「……ありがとうございます。」


大ちゃんの広い背中が私の視界に色濃く鮮明に焼き付く。

知っていた。というか、なんとなくそうなんじゃないかなって思っていた。

頭が良くて、なんでもできて、最近あった期末テストでは理系で一番だったって噂で聞いた。自分の頭の良さを自慢するような人じゃないから、他人から得た情報だけど間違いない。


(そっか。大ちゃん…)


大学に行くんだ。


3年性のこの時期で決まってない人はいないか。


でも。


(何も……相談されなかったな…)


2歳年下の私が相談相手になろうだなんて、そもそも烏滸(おこ)がましい考えなのかもしれない。


うだうだ黒い感情に包まれていると…。


「本田ー?」


担任の先生に呼ばれてハッとする。


「失礼します!」


いつも以上にお腹から声を出して、先生の元へと進んだ。背筋は変に緊張して伸び、唾液をごくりと飲み干したと同時に…。


「面談しよう。単刀直入に訊くけど卒業後の進路、どう考えてる?」


訊かれたくない部分を鷲掴みされた。