あれから数時間後。
「今日の面談は橋本から。用事がある人は連絡して。後日に回します。」
下校前のショートホームルームの時間になっても白紙な進路調査書。ガサツな私は引き出しの奥でいつのまにかグシャグシャになっていた。
(提出しなきゃなのに…)
進路調査前から名簿順に行われてる個別面談。不運にも今日、私の番だ。
絶対に進路どうするか先生に訊かれるに決まってる。
白紙で紙はぐちゃぐちゃで。
(……夢がある人が羨ましい。)
智樹は家業を継ぐために工学部に進学する。
葵ちゃんは昔から学校の先生になりたいって目標があって、得意かつ大好きな歴史学を専攻するために史学科がある大学を探すらしい。
明確な未来設計図。
揺るがない好きなもの。
私は大切な友達と笑って毎日を過ごしたり、春太とお母さんと一緒に暮らしたり。あとは…。
『美鈴』
大好きな大ちゃんに、隣にいてもらいたい。
大真面目に進路希望、『大ちゃんのお嫁さん』って書いて提出しようかな。
そんなこと、許されるはずもないのに。
幼稚な自分の考えに心の中で嘲笑った。