(……魔法の手…みたい…)


「……ねぇ…大ちゃん…」

「どうした?」


幼い頃に父を失くして、女手ひとつで育ててくれた母親は仕事で家にいることは少なくて。
春太はしっかりしてるし、優しくて支えてくれる大切な弟。

でも、私が甘えられる人なんて昔からずっと。


「………そばにいて…」


ずっと、大ちゃんだけだった。


「……大ちゃん、好きだよ…。」


良く言えば、『愛着』。
悪く言えば、『依存』。


「信じて…」

「………美鈴…」


本当だよ。本当のことだよ。


「……知ってるよ。」

「っ……」


大ちゃんは私の布団を捲り上げて、隣に寄り添うように横になる。


「……美鈴。」

「なに…?」







「……好きだよ。」








喉の奥の方がキュゥっと締まる。
より一層帯びる熱に、頭がクラクラする。


「………顔…近い…。熱…うつっちゃう…」

「いいよ。うつして…」


引き寄せ合うようにゆっくりと。


「…キス、したいんだけど」

「………うつしたくない…」

「…………美鈴も…したがってるくせに。」


大ちゃんは私の心境を読み取るのが上手い。
察しはいいし、昔から仲良しで長い付き合いで。

何よりも私は…。


「大ちゃんには一生隠し事が出来なさそう。」


右手で私の髪に触れて、真っ直ぐに視線を合わせた。そして今度こそ、唇同士を一瞬だけくっつけて離す。


「……美鈴の唇って柔らかいよな」

「かっ感想とか、い、いらないし…」

「ふっ…可愛い。」


甘くて甘くて甘ったるい。
心地よくて、流れるように求めてしまう。


「もっと…」

「………うん」


触れ合った部分から大ちゃんの優しさが滲(にじ)んで、私の心を暖かく照らす。