「なになに、彼女ちゃん迎えにいくの?」
「んー、迷い中。」
生徒会が終わって、小鳥遊に軽く弄られながら美鈴からの返信を待つこと10分。
帰って昼寝してるかもしれない。晩御飯作りに熱が入ってスマホを携帯してないかもしれない。
色々な想像が頭の中をよぎった。
「もう帰ったんじゃね?」
「今日は一緒に帰る約束したから絶対に待ってくれてるはず。」
「……幼馴染カップルって反吐(へど)が出るくらいに甘々なのな〜」
小鳥遊の言葉を無視してスクバを持ち、生徒会室を後にした。
(教室行ってみるか。)
朝の美鈴は元気なさそうだった。
元気になるまでずっとそばに居たいけど、それが叶うわけでもない。
「……はぁ…」
誰に聞かれるでもないため息をこぼして、不機嫌な気持ちで階段を降りる。
(……美鈴、可愛いもんな…。告白されるのは仕方ないか…。)
一度フった身だし、偉そうに彼氏ヅラするのは違う気がするけど…。
未だにモヤモヤする。
美鈴に降りかかるどんな悲しみからも守ってやりたい。
『何処の漫画のヒーローだ』と、自分自身に突っ込みを入れている内に、美鈴の教室に着いた。
(……吹奏楽部…?)
おそらくパート練習中だ。教室内をこっそり見渡すと、美鈴の姿はもちろんなくて…。
唯一、手掛かりになりそうなものを目にした。
黒板に記された日直の欄。『本田』『真島』の文字。
他に本田さんが居たら美鈴じゃないかもしれないけれど…。
美鈴の担任は自分が一年生の頃、副担任だった先生だ。理科の先生で、たまに日直に作業を任せることがある。
吹奏楽部の顧問ってこともあって、パート練習に教室を貸すときは大抵理科準備室で作業するように命じられる。
(…………理科準備室か…?)
自分で言うのもあれだけど、割と頭がキレる方だ。
目的地を定めて、再び歩き出した。