「……私、片想いの辛さも…失恋の辛さも知ってるのに……傷つけた。」
「かと言って、『可哀想だから付き合います』なんて奴は何処にも居ないだろ?」
「そうだけど…………気持ちに応えられないのって、こんなに苦しいんだって思ったら……」
「……………俺、一度美鈴のことフってるし…複雑な立場だけど…」
「……うん…?」
「諦めるか諦めないかは本人が決めることだし、諦めるなら気持ちを切り替えるのも告白の内だと思う。その覚悟がないまま告白してフラれたんなら自業自得だ。」
「……大ちゃん、まるで告白してきた人が悪いみたいな言い方…」
プクッと頬を膨らませて、美鈴は横目で俺を睨む。
「………『気にしない』なんて言ったけど、割と焦ってるのかもな…。」
いつだって俺は美鈴の味方でいたい。美鈴が泣いてたら側(そば)に居たいし、落ち込んでたら慰めてあげたい。
「………智樹って子は、きっと気持ちに蹴りを付けたかったんだろうな。」
「えっ…なんで智樹ってわかったの…?」
「なんとなく」
『好きです』宣言されたこと、そして体育祭の借り人競走で美鈴の手を引いてゴールに走っていく姿を思い出す。
………あいつ意外にも美鈴のことが好きなやつがいそうだ…。
美鈴は可愛い。ただの幼馴染の時も普通に可愛いと思っていたし、好きって自覚してからは更に……。
(……食べたくなるくらいだ…)
自分の心境を悟られたら、きっと美鈴は困るだろうな。
それくらい俺は…。
「美鈴は俺の彼女だから…誰にも渡せない。」
腕に力を込めて、肩に顔を埋める。
「わっ…わわわ…大ちゃん…。」
「どうした?」
「ドキドキして死にそう…」
ゆっくりでも良い。
俺でいっぱいになって欲しい。