「……俺…美鈴のことが好きだよ。」
ずっと昔から好きだった。
散々揶揄ってごめん。意地悪してごめん。
自分勝手に想いをぶつけて、ごめん。
「………その好きって…どういう意味の好き?」
「………お前が大輝先輩に対しての好きと同じ好き。」
「えっと……待って。冗談やめてよ。」
混乱している様子だった。突然、本当に突然伝えたから、美鈴は困っていた。
「………そうだな。ごめん。」
また逃げるのか、俺は。
天邪鬼な性根はいつまでも変わらないんだと思った。
不完全燃焼で終わりたくない、という自己中心的な考え方を美鈴に押し付けるのは違うよな。
昼間も葵に言ったように、『美鈴が幸せならそれでいい』って、心の底から思っているのに。
思っていたはずなのに。
(……なんで告ったんだろう。気持ちを突き通す覚悟もない奴が…告白する資格なんてない。)
初恋はうじうじと気持ち悪いくらいに心を弱らせる。
とっとと捨てよう。
恋なんて、するだけ無駄だ。
「ありがとう、智樹。ごめんね。私、大ちゃんのことが好きだから気持ちに応えられない。」
「………」
「……………ありがとう。嬉しかったよ。」
恋なんて。
するだけ……無駄じゃないのかもしれない。
大切にしまっていた想いは、無駄じゃないのかもしれない。
『ありがとう』『嬉しい』
それは取り繕った言葉かもしれないけれど…。
「………聞いてくれて、ありがと。」
美鈴に、そう言ってもらえた瞬間。
美鈴を好きでいたことを、誇りに思えた。